髙橋修法律事務所

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離婚Q&A

婚約の成立と婚約破棄の責任

2018.04.03

 婚約の成立

婚約とは、将来結婚しようという確実な合意です。

民法には婚約について定めがありません。しかし、婚約を不当に破棄すると損害賠償責任が認められます。問題は、婚約の成立が認められるかどうかです。
 誠心誠意将来夫婦となることを約束すれば婚約が成立するとされます。従って、結納の授受や婚約指輪の交換などの一定の形式は必要とせず、男女間の確実な合意があれば婚約は成立します。
従って、いつ、どこで、誰から、どのような結婚の申込があり、これに対して誰が、どのように結婚の承諾をして、将来結婚しようという確実な合意があったことを具体的に主張・立証できれば、裁判所で婚約の成立が認められる可能性はあります。

しかし、結納の授受、婚約指輪の交換、結婚式場の予約、双方の親に結婚の挨拶に行った、入籍する日を決めた、会社の上司や友人など第三者に結婚のことを伝えたなど儀式その他慣行上婚約の成立と認められるような外形的事実が全くないケースでは、この合意の成立を立証することは実際には非常に困難と思われます。
判例を見ますと、このような外形的事実がない場合で婚約の成立を認めたのは、女性が求婚され真実夫婦として共同生活をする意思でこれに応じて婚姻を約束し、長期間にわたり肉体関係が継続したケースがあります。

 婚約の破棄

婚約が正当な理由なく解消された場合、それによって生じた損害の賠償を請求できます。
性格の相違や、なんとなくと言った漠然とした理由、いわゆるマリッジブルーは婚約を解消する正当な理由にはなりません。
この婚約破棄の責任の性質については、一般的には一種の債務不履行(契約違反)と考えられますが、場合によってはそれ以上の違法性があって不法行為に近い場合もあります。

 賠償の範囲

賠償の範囲は、財産的損害だけでなく精神的損害も含まれます。
判例で認められる慰謝料の金額は30万円程度から500万円を超えるものまでかなり金額に幅があります。慰謝料の算定要素は個々の具体的事案により様々です。ただ、最近の裁判所は慰謝料の金額を50~100万円程度に比較的低額に抑える傾向にあります

判例で200万円をこえる慰謝料を認めたのは、婚約破棄の態様が非常に悪質なケースです。交際期間が17年と長く、男性が他の女性と入籍して婚約破棄した後も婚約相手の女性と肉体関係を継続しようとしたケースで200万円を認めた判例、婚約成立後も女性が他の男性との男女関係を継続したケースで200万円を認めた判例があります。交際期間の長さ、婚約成立後の不貞行為、女性を妊娠中絶させた、婚約が第三者に広く周知されている、女性の年齢、請求者側に落ち度が全くないなどの事情によっては200~300万円の慰謝料が認められることもあります。その他にも、原告と被告は見合いをして2週間後に結納を交わして婚約し、3ヶ月後に結婚式をすることを約束し、原告は結婚式の1ヶ月前に勤務先を退職、その間、被告の指示で原告は嫁入り道具を買いそろえたが、結婚式の1週間前に被告は仲人を通じ電話一本で婚約を破棄したケースで、400万円の慰謝料を認めた判例もあります。

財産的損害については、女性が結婚のために退職した後、婚約が不当に破棄されたケースで、事情によっては給与収入を失った女性の逸失利益の賠償が認められることがあります。

結納については、婚姻を目的とする贈与と考える説などいろいろ考え方がありますが、婚姻が成立しなかった場合、受領した側が不当利得して返還する義務を負います。婚姻が成立したかどうかは、事実関係に即して社会通念で判断されますが、内縁でも足りるとされます。なお、有責者からの返還請求はもちろんですが、双方に責任がある場合でも、結納授与者の婚約解消についての責任が結納をもらった者の責任より重い場合、信義則上結納の返還を請求できないとされます。合意解消の時は、双方の当事者が互いに授受した物の返還義務を負います。

婚姻期間中に贈与した金品もよく問題になります。原則として返還を請求することは出来ませんが、婚約解消の原因がもっぱら金品をもらった者の責任による場合、贈与された金品が贈与者の地位収入に比べて不相当に高額である場合などは、条理上贈与者は返還請求ができるとされています。

髙橋修法律事務所は、過去に婚約の成立をめぐり裁判で争った事件や示談交渉など婚約破棄の事件について多くの実績があり、現在も婚約破棄による損害賠償請求事件で裁判中の事件を多数扱っています。お気軽にご相談ください。