Q 小規模な会社でも取締役会を設置しなければならないですか。取締役会を置くかどうかでどう違いますか。
A
1.取締役会設置義務の有無
株式会社は、株主総会と1名以上の取締役を設けること以外は、原則として定款で自由に定めることができます(会社法326条2項、機関設計自由の原則)。従って、取締役会を設置するかどうかも、原則として会社が自由に定めることができます。
しかし、次の場合は取締役会を設置する義務があります(327条1項)。
①公開会社(定款上、発行する株式として一部でも譲渡制限の定めが置かれていない会社(2条5号)
②監査役会を設置する場合
③委員会(会社の機関として指名委員会、監査委員会及び報酬委員会)を設置する場合
2.取締役設置会社と非設置会社の違い
(1)取締役の員数
取締役会を設置しなければ、取締役の員数は1名でも構いません(326条1項)。
取締役会を設置する場合、取締役は3名以上必要となります(331条4項)。
(2)設置が義務付けられる機関
取締役会を設置した場合、原則として、監査役(会)又は三委員会のいずれかを設置する必要があります(327条2項本文)。
取締役会を設置した場合、株主総会の権限が制限され、業務執行の意思決定等を基本的に取締役会だけで行うことになるため、株主総会に代わる監督機関が必要となり、また、取締役への監督の強化を図る必要もあるため、監査役(会)又は三委員会の設置が必要となります。
取締役会を設置しない場合、取締役の職務執行に対する監督も株主総会や株主自身によって行われることが想定されているため、基本的には監査役等の監督機関の設置は任意とされています。
(3)株主総会の権限等
取締役会を設置しない場合、株主総会は、法定事項のほか、株式会社に関する一切の事項について決議することが可能です(295条1項)。
取締役会設置会社の場合には、株主総会で決議できる事項は、会社法及び定款で定められた事項に限られます(295条2項)。従って、定款で株主総会の決議事項を拡張することも可能です。
(4)業務執行
取締役会を設置しない場合、取締役が2名以上いる場合には、定款に別段の定めがなければ、取締役の過半数をもって業務を決定し(348条2項)、各取締役がその業務を執行します(348条1項)。一定の事項を除けば、業務執行の決定を包括的に特定の取締役に委任することもできます(348条3項参照)。
取締役会設置会社では、業務執行の決定は取締役会で行われ(362条2項1号)、取締役会で選定された代表取締役及び選定業務執行取締役が業務を執行します(363条1項)。
(5)会社の代表権
取締役会を設置しない場合、代表取締役やその他の代表者を定めない限り、取締役が2名以上の場合でも、各取締役がそれぞれ代表権があります(349条2項、1項本文)。
取締役会設置会社では、取締役会において代表取締役を選定しなければなりません(362条3項)。
3.機関設計の公示
その会社が取締役会設置会社かどうか、各機関の権限範囲については、商業登記や定款で確認することが出来ます。
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