遺言執行者の仕事をしていると、遺言するとしても、もう少し配慮して遺言しておけばいいのになあと思うことがあります。
例えば、お世話になった宗教施設に全部の財産を遺贈するという遺言をしたおばあさんがおられました。その方は夫に先立たれ、子供さんもいません。たくさんいた兄弟姉妹にも先立たれ、法定相続人は代襲相続人となる甥御さんだけでした。
甥御さんには遺留分がありませんから、この遺言がある以上、遺産は全く入ってきません。
おばあさんは、亡くなる前の数年間は痴呆状態となり、結局おばあさんが亡くなるまで、その甥御さんが経済的なことも含めおばあさんの面倒をみられました。甥御さんは、遺産をもらうことなど全く考えていない方でした。
遺言執行者としては、遺言内容のとおり、遺言を執行するしかありません。
お世話になった宗教施設に遺贈したいという、その気持ちはよく分かるのですが、亡くなる前にはやはり身内の方に面倒をみてもらわなければならないことを考え、遺産の一部を甥御さんに相続させるなど、遺言内容をもう少し慎重に考える必要があると痛感しました。